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アンチアカデミー スペシャル対談 第7弾
その後、ホラー映画はユニヴァーサル・ホラーに代表されるようなモンスターやゴシック物、冷戦時代を背景にしたSFホラーなどのファンタジー路線を歩んでいきます。フリッツ・ラング監督のドイツ映画『M』(’31)やカール・フロイント監督の『狂恋』(’35)なども殺人鬼を題材にしてはいるものの、『M』はホラー映画ではないですし、『狂恋』も怪奇ロマンと呼ぶべき作品でした。
そんなホラー映画界に久々に登場した本格的殺人鬼が、『サイコ』(’60)のノーマン・ベイツだったというわけです。実在の連続殺人鬼エド・ゲインをモデルにしたノーマン・ベイツの登場により、ホラー映画そのものの歴史が変わってしまったと言っても過言ではないでしょう。『サイコ』は様々なエピゴーネンを生み出し、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ディメンシャ13』(’63)やフレディ・フランシス監督の『恐怖の牝獣』(’64)、マイケル・カレラス監督の『惨殺!』(’62)などが作られましたが、中でも印象的だったのはウィリアム・キャッスル監督の『第三の犯罪』(’61)。財産を狙って殺人を重ねる女性と狙われる男性が実は同一人物だったというトリックが当時はショッキングだったわけですが、犯行そのものが計画殺人なので、厳密には殺人鬼映画とは呼べないかもしれませんね。
いずれにせよ、スラッシャー映画ブームの原点となった『ハロウィン』(’78)のマイケル・マイヤーズが登場するまでは、ホラー映画における殺人鬼というのはあくまでも“悪役”であって、決してヒーローではなかったわけです。あのノーマン・ベイツにしたって、アンソニー・パーキンスの名演で人々に記憶されたキャラクターではありましたが、いわゆるマーチャンダイジング化されるには『サイコ2』(’83)の登場を待たねばならなかったわけですし。これだって、マイケルやジェイソンの人気にあやかったであろうことは想像に難くありません。
で、その『ハロウィン』と『13日の金曜日』(’80)の大成功をきっかけに、凶悪な殺人鬼が若者を次々と殺していくというスラッシャー映画のブームが訪れます。『バーニング』(’81)や『血のバレンタイン』(’81)など数多くのヒット作が生まれましたが、どちらかというと残虐な殺害テクニックばかりに主眼が置かれてしまい、いずれも肝心の殺人鬼のキャラクターがいまひとつ印象に残りませんでした。そうした中で、強烈なインパクトを放ったのが『サマーキャンプ・インフェルノ』(’83)。内容的にはほぼ『13日の金曜日』のパクリ的な作品なのですが、犯人が明らかになるクライマックスの衝撃度はなかなかのものでした。ネタを明かすと、殺人鬼は女の子として育てられたがために人格が歪んでしまった男の子で、そのアイディア自体に目新しいものはないのですが、やけっぱちとしか思えないビジュアル的インパクトには凄いものがありました。この女装殺人鬼アンジェラは人気キャラクターとなり、続編『レディ・ジェイソン/地獄のキャンプ』(’88)も登場。ここでは、あのブルース・スプリングスティーンの実の妹パメラがアンジェラ役を怪演しており、日本未公開のパート3まで作られています。
その他、80年代のホラー映画界は殺人鬼キャラクターが花盛りで、『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ、『チャイルド・プレイ』シリーズのチャッキーが誕生したほか、トビー・フーパー監督が自身の代表作『悪魔のいけにえ』(’74)を復活させた『悪魔のいけにえ2』(’86)でレザーフェイス人気が沸騰。『悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲』(’89)、『悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイス』(’95)とシリーズ化され、フィギュアまで発売されるほどの大人気となったわけです。
ちなみに、個人的なオススメとしては、『ハロウィン』シリーズなら『ハロウィン4/ブギーマン復活』(’88)と『ハロウィン5/ブギーマン逆襲』(’89)。これは2本ワン・セットで見てください。『13日の金曜日』シリーズなら、断然『13日の金曜日/完結篇』(’84)。主演のキンバリー・ベックはシリーズで最も印象的なヒロインでした。ちなみに彼女、『インデペンデンス・デイ』(’96)にもチラっとだけ出てます。『エルム街の悪夢』シリーズは、やはり『エルム街の悪夢3/惨劇の館』(’87)。シリーズ中で最もイマジネーション溢れる作品です。もちろん、いずれも第1作目が最も優れているということが大前提ですけどね。『チャイルド・プレイ』シリーズに関しては、やはり第1作目が全てだと思います。
ということで、か〜な〜り駆け足で無理矢理(笑)殺人鬼映画の歴史を紐解いたわけですが、もちろん、これ以外にもこぼれている作品は沢山あります。改めて機会があれば、古典から新作まで系統立ててまとめてみたいもんです。
ハンニバル・レクターだったり、ジグソーだったりと、最近は知的な頭脳派の殺人鬼が定番化しているみたいですが、本能の赴くがままに手当たり次第殺しまくる生粋の殺人鬼キャラもなかなか捨て難いんですけどね〜。
なかざわ ひでゆき

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伊藤さとり(映画パーソナリティ)
なかざわ ひでゆき(映画/ポップ・ミュージック研究執筆家)